高齢化社会を迎えた日本 各国で高齢化は進みつつありますが、日本は、世界のなかで最も早く高齢化社会を迎えた国となっています。 最も早く高齢化社会を迎えた国2023年、日本は75歳以上の人口が初めて2,000万人を超えました。10人に1人が80歳以上となる計算です。 高齢者と定義される65歳以上の人口は総人口の29.3%を占め、世界(200の国と地域)1位です。 引用:統計からみた我が国の高齢者(令和6年9月15 日) |総務省29.3%の内訳は、65〜74歳が12.5%、75歳以上が16.8%と、どちらも世界的に高い割合となっています。 また65歳以上の人口割合の推移を見ても、日本が他国よりいち早く高齢化社会を迎えたことがわかります。 引用:統計からみた我が国の高齢者(令和6年9月15 日) |総務省 第3次ベビーブームは起こらず出生数は、約50年にわたり減少を続けています。1947~1949年(昭和22〜24年)の第1次ベビーブームには毎年260万人以上が誕生。その後、出生数は1984年に150万人を切り、2023年は72万7,277人、2024年は70万人を割る見込みです。出生数のピークだった260万人と比べて1/4程度にまで減っています。 グラフ上にみえる2つの山が第1次ベビーブームと第2次ベビーブーム引用:令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省 第2次ベビーブームに生まれた世代が20代後半を迎える2000年前後、第3次ベビーブームは起きませんでした。晩婚化、平均出産時年齢の高齢化、非正規雇用の増加など雇用形態を含めた経済状況の変化、その後発生するリーマンショックの影響などが複合的に作用して、生き方が変化していったことが要因と考えられています。 高齢者がしばらく増加する社会に75歳以上の人口が増加する傾向は当面続き、2030年まではすべての都道府県で増加すると予想されています。 参照:日本の地域別将来推計人口 令和5年推計 報告書|国立社会保障・人口問題研究所 2070年には約4人に1人が75歳以上となると推計されています。 参照: 出生中位・死亡中位仮定による推計結果|日本の将来推計人口 令和5年推計|国立社会保障・人口問題研究所 データで見る、いま起きていること高齢者が増え、若者が増えない社会となったいま、どうすれば全年代が豊かな生活を営むことができるでしょうか。 総人口の減少総務省統計局のデータを見ると、2024年7月時点の75歳以上の人口は2,061万人で、前年同月に比べて69万5千人増加しています。 一方、総人口は前年同月より約51万人減少し、1億2,397.5万人となっています。 引用:人口推計(2024年(令和6年)7月確定値、2024年(令和6年)12月概算値) (2024年12月20日公表)|総務省統計局(2024年12月20日にアクセス)寿命の伸びと出生数の減少とで人口構成が変わり、高齢化社会を迎えているわけです。 社会保険料の給付と負担の増加私たちが月々支払っている社会保険料は、医療、年金、福祉、介護、生活保護など、社会保障制度を成り立たせるために使われています。 高齢化社会に伴う年金や後期高齢者の増加による医療費など、社会保障の給付に使われる費用は年々増えています。 引用:社会保障全般 社会保障制度改革 給付と負担について|厚生労働省国民に給付される金額も増えていますが、支払う社会保険料の負担も年々増しています。 社会保障費の財源は、私たちと企業が支払う社会保険料と税金です。2024年度予算ベースでは、財源の約60%が社会保険料でまかなわれています。 引用:社会保障全般 社会保障制度改革 給付と負担について|厚生労働省社会保険料は年々増加しています。以下は社会保険料と、私たちが「社会保険料」として毎月支払っている「被保険者拠出金」のグラフです。 「社会保障財源(ILO基準)の項目別推移(1951~2022年度)|社会保障費用統計(令和4年度)|国立社会保障・人口問題研究所」を基に、RENOSYマガジン編集部にて作成30年間デフレで給料が増えない日本において、社会保険料が増えているということは、私たちの負担が増しているということです。 所得に対してどれほど負担をしているのかは、社会保険料と、所得税などの税金を合わせた以下の負担割合を見ると傾向がわかります。 引用:負担率に関する資料 |財務省社会保険料の負担率は、1990(平成2)年は10.6%、2008(平成20)年は15.8%、2023(令和5)年は18.6%でした。30年前と比べて2倍近く負担が増えています。 死亡数の増加死亡数は、1980年代から増加傾向です。 引用:令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況 |厚生労働省今後も高齢者増加に伴い2040年までは増加傾向、その後緩やかな減少傾向となると予想されています。 参照:令和6年版高齢社会白書|内閣府 相続件数の増加死亡数が増加すれば、相続の数も増えることは想像できます。相続件数は、相続税の発生した件数で見てみます。 下記のグラフは、相続税の課税件数(被相続人の数)です。 「相続税の課税状況の推移|相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料 |財務省」を基にRENOSYマガジン編集部にて作成2015年からグラフがぐんと上がっているのは、2013年度の税制改正で、相続税の増税があったからです。それまで基礎控除額が「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」だったのが「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」となりました(2015年1月以降の相続より)。そのため、対象件数(被相続人の数)は約2倍に跳ね上がっています。 2015年以降、相続件数は増加傾向です。 空き家の増加空き家は増加傾向が続いています。1993年の149万戸から2023年の385万戸と、約2.5倍増えています(以下のグラフのピンク色の部分)。 ピンク色部分の定義:人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家)。引用:令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果|総務省 どういった経緯から空き家になるかというと、高齢に伴い自宅を出て介護施設等に入居する、親族からの相続、などが主なきっかけです。 空き家となる要因は複数あります。解体費用の負担、家財などが片付けられない、将来使うかもしれない、などの理由です。 解体費用の負担に加え、取り壊したあとに約6倍増える固定資産税の負担ができないという場合もあります。 インフレ日本のインフレは、コロナ禍以降の世界的インフレやウクライナでの戦争によるエネルギー(原油)と原材料価格の上昇、円安による輸入財価格の高騰など、外的要因によって始まりました。現在に至るまで、多くのモノやサービスが値上げされてきています。 引用:2020年基準 消費者物価指数|総務省(2024年12月20日にアクセス)家賃についても上昇傾向が見られます。消費者物価指数(CPI)で賃貸住宅の家賃を示す指数「民営家賃」は、2023年に25年ぶりにプラス(前年比0.1%上昇)となりました。そして2024年11月の「東京都区部の消費者物価指数(CPI)」では、前年同月比0.9%のプラスになり、30年ぶりの上げ幅となっています(2020年基準 消 費 者 物 価 指 数 東京都区部 2024年(令和6年)11月分(中旬速報値))。要因は、建築資材の高騰・人件費の高騰といわれています。 このように数多くのものやサービスが値上げされるなかで、賃金の上昇は物価上昇に追いついていません。2020年(令和2年)を100とした、2024年の実質賃金は6、7月を除いてマイナスとなっています。 引用:「時系列第6表 実質賃金指数|毎月勤労統計調査 令和6年10月分結果速報|厚生労働省」を基にRENOSYマガジン編集部にて加工そのなかで日本銀行の植田総裁は2024年3月に「マイナス金利の解除」を発表。7月には金利を0.25%引き上げました。今後も「年2%のインフレ」と判断されれば、利上げをしていく方針のようです(2024年12月19日植田総裁の会見)。 変化を読み取ること、早めに対策することが鍵高齢化社会とインフレにより、賦課(ふか)方式*である年金の負担も、現状の制度では増え続けます。「負担が増える」ことを甘んじて受け入れるだけで、私たちに打てる対策はないのでしょうか。 日本証券業協会の調査によると、2024年に始まった「新NISA」の口座を開設した年代は20〜30代が最も多くなりました。 始めたきっかけとして「投資に関する税制優遇制度(NISA・確定拠出年金制度)があることを知った」「資産形成の重要性について学んだ」「将来の生活に不安があり、必要性を感じた」といった回答の割合が高く、自分たちが高齢者となる時のために若者が行動を始めた結果が現れているといえます。 参照:個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書 2024年12月|日本証券業協会 空き家に対する対策増加する空き家に対して、問題解決に向けた法整備も進んできています(空家等対策の推進に関する特別措置法)。地方自治体などの行政が、放置され続ける空き家に介入しやすくなります。 特定空家:倒壊の危険性が高いなど、周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家 管理不全空家:そのまま放置すると倒壊等の恐れがある状態(特定空家の前段階) 上記の空き家として指定されてしまうと、減税の対象外となり、高い固定資産税を支払わなくてはいけなくなります。 空き家を「解体費を払えないから」と放置できる状況ではなくなりつつあります。家族と早くから話し合い、その家と土地を活かすか売却するのか、または国に管理を任せるのかなど、取れる対策に着手することが肝心となります。 早めに行動する傾向もコロナ禍以降、これから起こるであろう事象に対処しようとする傾向も見られます。たとえば、財産を残す側の親ではなく、財産を引き継ぐ子が親に積極的に働きかけて、一緒に対策を練るといった動きがあります(当社調べ)。 技術革新日本の人口構造が変化するのみならず、技術革新によっても社会が大きく変わろうとしています。 産業革命が起きて人類が大きく発展したように、今後も技術革新が社会にもたらす変化の可能性は未知数です。 2022年末に登場したChat GPTをはじめとする生成AI技術によって、仕事の仕方が変わってきているのを実感している人も多いのではないでしょうか。たとえば、新しい医薬品の開発に10年以上かかるといわれてきた創薬の世界でも、AI技術によって大きな変化が起きています。今まででは考えられないほどのスピードでの開発が可能となって、私たちへの恩恵が期待できます。 また、コロナ禍で日本でも急速に広がったコード決済等のキャッシュレス決済。数年でこれほど現金を持ち歩かなくなることを想像できなかったのではないでしょうか。 さらにデジタル化が進み、貨幣制度そのものが大きく変わり、デジタルが当たり前の世の中になったら何が起きるでしょう。実証実験も行われてきている、日本銀行によるデジタル通貨「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」。国がデジタル通貨を発行する社会になったら、お金の流れが明らかとなり、「申告による納税の仕組み」も変わるのではないでしょうか。 私たち自身の変化「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により定年の引き上げ等が促され、また昨今の労働者不足の状況もあって、65〜69歳の就業率が上昇しています。 引用:高齢者雇用対策の概要 2024年6月24日|厚生労働省健康寿命を伸ばすことで、人生100年時代を働きながら楽しく過ごせる可能性も広がります。社会とつながりを持つことで、心身の健康が維持される側面もあります。私たち自身も考え方をアップデートし、高齢化社会への対応を検討する時がきています。 投資においては、さまざまな資産に分散投資するのがリスク分散に有効であるという理論があります。分散投資をすることで、何か1つの資産の価値が下がったとしても、ほかの資産でカバーができることがあります。人生においても、いくつかの選択肢を持っておくのが、今後の大きな変化にも対応できる可能性を増やすのではないでしょうか。 受け身ではなく、“激動する世界・社会の一員”の意識が鍵この5年ほどで、世界的コロナ流行をきっかけに働き方を始めとして社会が大きく変わったことを経験。また、各地で戦争が起き、これまでとは世界が変わってしまったことも経験してきています。地球環境も変動しており、ありとあらゆることが動いています。 これから数年後という近い将来でも、今とはがらりと変わった景色を見る可能性は十分にあります。 社会がどうなっていくかは誰にもわかりませんし、正解は1つとは限りません。さまざまな選択肢があるなかで、何を選ぶかを決める必要があります。目の前の生活で忙しいなか、一人ひとりが常に変化しつづける社会への関心を持つことで、その社会の変化の有り様も、十分に変わる可能性があります。 【関連リンク】 ※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。 (责任编辑:) |