ニューヨーク、2018年9月20日 国連開発計画(UNDP)とオックスフォード貧困・人間開発イニシアティブ(OPHI)がきょう発表した2018年「多次元貧困指数(MPI)」の推計によると、貧困の中で暮らす人々の半数が18歳未満の子どもとなっています。 新たなデータによれば、低・中所得国を中心に104か国で、6億6,200万人の子どもが多次元の貧困に陥っています。子ども全体の半数が貧困に陥っている国も35か国あります。 MPIは単に所得面だけでなく、人々が複数の側面で同時に経験する貧困の実態を把握するための指数です。健康、教育、生活水準の3つの主要な次元において、水や衛生施設(トイレ)、十分な栄養または初等教育を欠くなど、人々がどのように取り残されているのかを明らかにしています。MPIを構成する要素全体の3分の1以上で欠乏状態にある人々は、多次元貧困層と定義されます。2018年は「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿う形で、世界人口のほぼ4分の3を対象としています。
貧困に対処できるという明るい兆しも 最新の数字は、どれだけ多くの人々が依然として開発から取り残されているかを如実に示す一方で、適切なアプローチを取れば、速やかに事態が改善することも実証しています。 約13億人が多次元の貧困に陥っていますが、この数は2018年MPIの算定対象となった104か国の人口のほぼ4分の1に当たります。この13万人のうち半数近くの46%は、深刻な貧困の中で暮らし、MPIを構成する要素の半数において欠乏状態にあると考えられます。 取り組みの余地はまだ大きいとはいえ、このような貧困に取り組むことは可能で、また、実際にも取り組みは進んでいるという明るい兆候も見られます。時系列的な前進評価の初対象国であるインドでは、2005/06年から2015/16年にかけて、2億7,100万人が貧困を脱しました。同国の貧困率も、同じ10年間で55%から28%へと、ほぼ半減しています。 アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、「特に子どもの貧困は衝撃的な水準に達していますが、その改善もまた、同じように驚くべき速さで進む可能性があります。多次元貧困指数は、人々が経験する貧困の多種多様な実態を把握するために欠かせない知見と、グローバルな貧困の規模や性質に関する新たな見方を提供しつつ、あらゆる形態の貧困をなくすことが決して不可能ではないことを私たちに改めて教えてくれます」と語っています。 他の国について同様の時系列比較はまだ行われていませんが、先週発表されたUNDPの「人間開発指数」の最新情報によると、サハラ以南アフリカの多くの国を含め、すべての地域で開発の大幅な前進が見られています。2006年から2017年にかけ、平均寿命はサハラ以南アフリカで7年以上、南アジアで4年近く延びる一方で、小学校就学率は100%に近づいています。これは、多次元の貧困改善にとっても明るい兆候です。
多次元貧困層全体の83%はサハラ以南アフリカと南アジアに 多次元の貧困は、世界各地の開発途上地域で見られますが、特にサハラ以南アフリカと南アジアで深刻な広がりを見せています。 例えばサハラ以南アフリカでは、約5億6,000万人(人口の58%)が多次元の貧困の中で暮らしていますが、そのうち3億4,200万人(多次元貧困層の61%)は深刻な貧困を抱えています。一方、南アジアの多次元貧困層は5億4,600万人(人口の31%)で、うち2億人(37%)が深刻な貧困を抱えています。 他の地域の数字はこれほど深刻ではなく、多次元貧困層が人口全体に占める割合はアラブ諸国で19%、データが入手できる欧州・中央アジア諸国で2%となっています。各国の国内にはかなりの格差があります。2018年MPIは各国国内の1,101地域についても算定されていますが、これを見ても、87か国について国内で多次元貧困の水準に格差があることが分かります。 最新のデータは、全世界の多次元貧困層の大多数に当たる11億人が暮らす農村部では、貧困率が36%と、都市部の4倍に上ることも明らかにしています。 サビーナ・アルカイヤOPHI理事長は、「多次元貧困指数は、グローバルな貧困について検討し、有用な事実を伝えるための強力なツールです。さまざまな国がそれぞれ、どのように貧困に対処できているかを把握できるだけでなく、どのような貧困層がどこに存在しているか、また、こうした人々が経験する多種多様な貧困の実態に関する理解を深めることにも役立つからです」と語っています。 従来の貧困指標は、所得が1日1ドル90セント未満の人々の数として示されることがよくありました。これは、人々の所得の低さを浮き彫りにしたものの、これらの人々が日常生活で実際に貧困を経験しているか否か、また、どのような形で貧困を経験しているかを明らかにしてきませんでした。MPIはこれを補完する形で、貧困の実態や全世界の人々に対する貧困の影響を表しています。 セリム・ジャハンUNDP人間開発報告書室長は、「持続可能な開発目標(SDGs)は、あらゆる形態の貧困をあらゆる場所で根絶するよう呼びかけています。多次元貧困指数は、どこの場所のどんな人々にとって貧困がどのように映っているかを理解しようとする人々や、現在、そして将来的に貧困からの脱出を図る人々を支援するための政策に携わる人々に対して、非常に価値の高い情報を提供し、貧困根絶に向けた呼びかけにこたえています」と語っています。 MPIの中心的なデータは貧困層全体を、副次的なデータは極度の貧困層を対象とするものですが、発表される数字には、貧困の一歩手前にある人々のデータも含まれています。こうした人々は、必ずしも多次元の貧困に陥っているとはいえないものの、不安定な生活を送り、貧困ライン以上の生活を維持するために汲々としています。 データを見ると、貧困層に分類される13億人に加え、8億7,900万人が多次元の貧困に陥るリスクを抱えていることが分かりますが、紛争や病気、干ばつ、失業などの影響があれば、そのリスクは直ちに現実となりかねません。 * * * 2018年多次元貧困指数データ(英語)はこちら MPIについて 国連開発計画(UNDP)は、社会の様々な人々と力を合わせ、危機に耐えうる国づくりを支援し、すべての人の生活の質を向上させるような成長を推進し持続することを目指しています。UNDPはグローバルな視点と共に地域ごとの洞察に満ちた知見を提供し、人々を力づけ、国々をたくましくする活動を約170の国と地域で行っています。 オックスフォード貧困・人間開発イニシアティブ(OPHI)は、2007年に設立されたオックスフォード大学国際開発学部内の経済研究・政策拠点です。そのねらいは、人々の経験や価値に根差す多次元の貧困を削減するため、さらに体系的な方法論と経済の枠組みを前進させることにあります。 (责任编辑:) |