日本の年金制度の始まりはいつから?年金制度の歴史を解説! 今の日本の年金制度(国民年金・厚生年金)の始まりは、1960年代であり、実は比較的新しいものです。 今回はそんな公的年金制度について 日本の年金制度の始まりはいつからなのかとその理由 始まりの頃の年金制度とは?年金制度の変更の遍歴 【特集】明治時代以降の日本の年金制度の歴史 この3点を解説していきます。 「年金制度が始まったころは高齢者は年金をもらっていたの?」「国民年金が日本に導入されたのってなんで?」など、率直な疑問にも答えてあります。 最後まで読んでしっかり理解しましょう。
日本の年金制度(国民年金・厚生年金)の始まりは戦後 「日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人全員」に加入義務がある年金制度ですが、国民年金法を根拠とした現在の形の年金制度がスタートしたのはいつからかというと、戦後の1961年のことです。 それまでにも年金といわれる保険制度が存在してはいたのですが、加入資格が非常に限定的でした。 くわしくは後述しますが、年金制度発祥当初に加入資格があったのは軍人のみです。その後加入者資格が拡大されたものの、それでも警察官や教師などの公務員に限られていました。 一般労働者が年金制度に加入できるようになったのは1941年のことで、そこから20歳以上60歳未満のすべての人が加入できるようになるまでは20年かかっています。 なぜ年金制度は日本でも導入されたのか? もともと加入資格が軍人や公務員のみに限定されていた年金制度ですが、戦後に軍人や公務員以外の労働者が急増したために、一般労働者でも年金制度に加入できるように制度改正が行われました。 このとき、年金制度の名称も「厚生年金保険」に変更されています。誰もが加入できる国民年金が先かと思いがちですが、実は厚生年金の方がスタートは早かったのです。 しかし、厚生年金保険は農業・漁業従事者や自営業者は対象外であったため、それらの職業に就いている人々は年金未加入状態でした。 また、従業員が5人未満の企業や厚生年金保険加入者の配偶者の加入義務がなかったために、企業の方針で厚生年金に加入できなかったり、自己判断で加入しなかったりという人も多く存在しました。 その結果、厚生年金保険に加入できなかった人、加入しなかった人が老後の生活に困ったり、障がい者になった際に保障が受けられなかったりして社会問題化したのです。 それまでは働き出した子どもが親を支えていたため、無年金でも問題はありませんでした。 しかし、経済成長とともに親元を離れて就職、結婚する人が増え、別世帯の親の生活を支えられないという人も増えたことから無年金の問題が大きくなってしまいました。 この問題を解決するために、「」が創設されました。
初めてできた日本の年金制度はどのような制度? 1961年にスタートした国民皆年金制度ですが、創設当初の制度の内容は現在と少し異なります。まず、現在の国民年金制度の概要を見てみましょう。 対象者:20歳以上60歳未満の人全員(専業主婦や学生も強制加入) 受給開始年齢:原則65歳 支給額:年間77万9300円(65歳から満額受け取った場合) それでは、創設当初の国民年金制度はどうなっているでしょうか。 対象者:20歳以上60歳未満の人全員(ただし専業主婦や学生は任意加入) 受給開始年齢:60歳 支給額:3500円 現在は専業主婦や学生も強制加入ですが、創設当初は任意加入でした。そのため、専業主婦で年金は未加入という人もいたのですが、高齢になってから離婚したなどの場合に生活に困窮する人が出てきたため、強制加入に変更されています。 また、受給開始も60歳と早かったのですが、少子高齢化などを理由に65歳に引き上げられています。現在でも申請すれば60歳からの受給も可能ですが、年金が減額されるので、できれば避けた方がよいでしょう。 支給額が大きく異なるのは、当時と現在の物価が大きく異なるためです。「物価スライド制」といい、そのときの消費者物価指数によって年金額が変更されるようになっています。 年金制度の始まりに高齢者は受給できたの? 1961年にスタートした国民年金制度では、受給資格期間(年金保険料を納付した期間)が25年なければ年金が受給できませんでした。(2017年8月1日から、受給資格期間が10年あれば年金が受給できるように変更されています) そうなると、国民年金制度がスタートした時点で35歳以上の人は条件が満たせず、年金が受給できなくなってしまいます。 これでは「国民皆年金」が達成できないため、救済措置として「受給資格期間が10年あれば年金を受給できる」という特例が設けられました。 ですが、国民年金制度がスタートした時点ですでに50歳を超えている人の場合、受給資格期間の特例を利用したとしても条件を満たすのは不可能です。 そこで、年金制度スタート時に50歳超の人に対しては、年金保険料を一切納めていなくても、税金から「福祉年金」を支給するという救済措置が設けられました。 スタート時点で高齢だった人も、このような特別な措置で年金を受け取ることができたのです。 なお、「福祉年金をもらう人以外の人の年金も税金から支給してはどうか」という話も出たのですが、もし高齢化社会になったときに、国の負担が大きくなりすぎて破綻する可能性があるとして実現しませんでした。 年金保険料の支払いが苦しく、「税金から出してくれればな」と思う人もいるでしょう。ですが、その場合は所得税や消費税が今よりはるかに高くなるでしょうから、かえって生活が苦しくなるかもしれません。 年金の受給資格についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。 年金制度の始まりはいつから?公的年金制度の発祥の歴史 年金制度の歴史の始まりは明治時代の1875年までさかのぼります。なんと140年以上も前のことです。 最初は「海軍退隠令」として、海軍の人たちに対して国を守るために誠心誠意尽くしてくれた「お礼」として年金を受け取ることができました。当初は年金という意味合いよりも「恩給」としての意味合いが強かったのです。 その後、陸軍軍人にも与えられ警察官や教職員などの公務員にもしだいに広がっていきました。そして、1923年「恩給法」が制定され公務員のための年金制度が確立されました。 1939年:船員保険として年金制度の前身が誕生 当初は軍人や公務員に対する「恩給」としての意味合いがあった年金制度ですが、民間人に対しても設けることになります。 それが1939年に始まった「船員保険法」です。なぜこの時期に民間に対しての「船員保険法」が制定されたのでしょうか。 民間の船員は軍人ではないですが、軍隊が各地で戦うための重要な輸送インフラである船舶は敵国から攻撃される危険性がありました。 そこで、海軍同様に危険な仕事に従事していた民間の船員に対し、船員保険法という年金制度が始まったのです。 1941年:労働者の年金保険が始まり 太平洋戦争が始まり、国をあげての総力戦となりました。 軍人や公務員以外にも国のために働く人たちに手厚い補助を設けて、より一層国に忠誠心を植え付ける必要がありました。 そして、1941年「労働者年金保険法」として工場で働く男子労働者を対象とした制度が始まります。 その後、1944年には女子労働者も対象となりました。これが現在の厚生年金の始まりです。 実は、現在の年金制度の始まりは戦時中だったのです。 1961年:国民皆年金体制の始まり 戦前の年金制度は、戦争のための制度という側面が強力でした。 戦後の日本はアメリカのGHQ指導の下、年金制度についても先進国の仲間入りをしようとしました。 そこで、国の為に働く人だけでなく全ての国民のための制度にする必要が出てきました。 また、当時は年金制度に加入していない国民が多数居たことが大きな社会問題となっていました。 今後は真に国民のための年金制度が必要である、ということで1961年に国民皆年金体制が誕生しました。 1960年代:日本の成長で年金制度が必要不可欠に 戦争からの復興も目覚ましい1964年には、東京オリンピックも開催されました。その後、日本はいざなぎ景気と言われる好景気で、高度経済成長期に突入しました。 現在の日本の経済成長率が1%前後と言われる中、当時は今では考えられない年10%以上の成長率で経済が拡大していきました。 その結果、国民のライフタイルも大きく変わり農村部から都市部へと移り、主要産業も農業漁業から重工業へと移ります。 また、国民のライフスタイルの変化だけではなく、経済の高成長とともに人口の急増が起こり、国民の老齢化に対応する必要が出てきました。 そのため、年金制度も充実させることとなったのです。 1986年:国民年金の強制加入の始まり しかし、追い打ちをかけるように新たな問題が発生しました、当時結婚を機に専業主婦になる女性が多く、年金は任意加入のため無年金の女性が多くいました。 これに対処するため、1986年から基礎年金制度で専業主婦の国民年金制度への強制適用が始まりました。さらに1991年には学生も強制加入となりました。 しかし、急激な人口増加はその後急激な高齢化をもたらします。 高齢者人口の増加と同様に出生率も上がって現役世代も増加すれば良いですが、そうはなりません。 その結果、高齢者人口の増加による年金財源の枯渇の可能性という新たな問題が出てきたのです。 年金は自分の積み立てたお金を受け取るのではく、自分が払ったお金が現在の年金受給者に渡る、賦課方式と言われる世代間扶養で成り立っています。 これは人口が増え続けている場合には問題なく維持されるのですが、高齢化伴って人口が減少し、高齢者の割合が増えると維持が難しくなります。 こうなれば、現役世代からの年金支払額を増額させたり、運用で高いリターンを求める必要がでてきました。 特に団塊世代と呼ばれる1947年~1949年に生まれた人たちが一気に年金受給が始まり、年金財政が傾き始めます。 さらにこの団塊の世代の子供たち、いわゆる団塊ジュニア(1971年~1974年生まれ)の人たちが年金受給が始まればさらに年金財政の悪化が懸念されています。 それでは将来年金は破綻してしまうのでしょうか?答えはNOです。年金制度が破綻する事はまずあり得ません。 詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。 関連記事
まとめ:年金制度は人生のリスクに備えるように国が制度化したもの この記事では、年金の始まりから今後の展望について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 今回の記事のポイントは、 年金制度の発祥は明治時代 現在の年金制度の基礎は戦時中に始まった 国民皆年金制度は1961年に始まったが、強制加入ではなく無年金の問題もあった 国民年金への強制加入は1986年に開始 年金制度の破綻は現状ありえないが、自分でも老後の資金を用意する必要がある です。年金制度の歴史は明治時代から始まり、当初は国の為に働いた官吏のための恩給という位置づけでした。 その後対象者が増え、戦時中に今の厚生年金の基礎が完成し、戦後に国民年金制度が誕生します。 公的年金の給付額は基本的に現役時代に受け取っていた給料の半額程で一定しており、今後もこの水準が維持されると考えられています。 今の時代は年金に対する不信感が強まっていますが、iDeCoなどの制度を利用して公的年金の他にも生活を支える事ができる資金作りが必要です。 政府も年金作りに積極的になっており、優遇制度も多々設けています。 このような制度を活用して、現役時代も老後も安心できる生活を送りましょう。 ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。 参照:厚生労働省「公的年金制度の歩みとこれまでの主な制度改正」 (责任编辑:) |