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現代の天文学では、未知の天体をできるだけ早く発見し、その詳細を詳しく観測することが重要な課題の一つとなっています。 その中心的な役割を担っている望遠鏡の一つが、自動天文観測システム、ATLASです。このプロジェクトの最大の目的は地球へ接近し、衝突するリスクを持つ小惑星を早期に検知し、警告を発することです。口径0.5メートル級の広視野望遠鏡を複数台運用し、毎晩空の広範囲を繰り返し撮影することで、背景の星々に対して相対的に移動する天体を自動的に検出します。 この高度な監視能力は、当初の目的である小惑星の発見に留まらず、遠方から飛来する彗星や、超新星爆発など、多岐にわたる天文現象の発見に大きく貢献しています。その優れた観測の実績の一つとして、史上3番目の恒星間天体として注目されている3I/ATLASの発見もあります。
こうした動く天体を捉えるシステムによって発見され、ひときわ注目されている天体の一つが、彗星 C/2025 K1 (ATLAS) です。この彗星は、太陽の近傍を通過した直後に劇的な変化を見せたことから、天文学者たちの注目をさらに浴びています。 太陽系の最果て「オールトの雲」から来た原始の天体この彗星は、太陽系の最果てにあるオールトの雲を起源としています。
そこには、今から約46億年前に太陽系が誕生した頃の氷の天体が、当時の姿のまま残されています。しかも、これまで一度も太陽に近づいたことがないため、太陽系が誕生した当時の情報を色濃く残した原始的な天体と考えられており、発見当初から世界中の天文学者の間で大きな注目を集めました。 特に、太陽の至近距離を掠めるような軌道を描いて飛来したことから、強烈な熱によって、核が崩壊し、内部の物質が露出するのではないかという期待が抱かれていました。実際に、2025年10月8日に近日点を通過し、太陽からわずか0.33天文単位という至近距離まで接近しました。この過酷な環境が、その後の劇的な崩壊劇の引き金となりました。 急激な増光:光度曲線が示すアウトバースト
この図は、彗星の明るさの時間変化を示した光度曲線です。横軸が時間で、縦軸が明るさ、単位は等級です。小型の望遠鏡を使えば肉眼でも見れるくらいの明るさがありました。光度曲線を確認すると、近日点を通過した後の11月2日から4日にかけて、彗星の明るさが急激に上昇する、アウトバーストを起こしていることが分かります。
このような現象では、彗星の構造に変化が起こったことも考えられます。実際に、地上の望遠鏡を用いた観測からは、この増光に伴って彗星の核を取り巻くコマの形が、短時間で変貌している様子がこのように捉えられています。左が、11月4日、真んが11月7日、右が11月10日に取得された画像です。あまりはっきりしませんが、時間と共に全体的な形が変化している様子がわかります。 ハッブル宇宙望遠鏡による緊急観測と核の分裂このような変化をより鮮明に捉えるために、ハッブル宇宙望遠鏡を用いた高解像度の緊急観測が、11月8日から10日に、このように行われています。
彗星の核が鮮明に見えるようになり、核が一つではなく、少なくとも4つの大きな破片に分裂した姿が描き出されています。特に、最初の観測で明るい主要な成分として見えていたものが、わずか数日後の次の観測ではさらに細かく断片化していくという、逐次的な分裂の過程が捉えられています。 さらに、明るさの時間変化と比べると、核が物理的に割れた直後にすぐに明るくなるのではなく、1日から3日ほども遅れて、明るくなることが明らかになりました。これは、分裂によって新たに露出した彗星内部の新鮮な氷や揮発性の物質が、太陽の熱を受けて十分に昇華し、ガスや塵を放出し始めるまでに物理的なタイムラグがあることを示唆しています。 つまり、太陽系の最果ての地から、数億キロの旅を経てきた彗星の内部物質が、初めて太陽の光に触れて活動を再開するまでの熱の伝わり方という、物理学的なプロセスを捉えることに成功しています。 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による多波長観測このように、ハッブル宇宙望遠鏡によって核の分裂が確認されたことから、この貴重な瞬間を逃さないために、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による緊急観測も実施されています。 特に、エウレカ・サイエンティフィック社のBryce Bolin博士を中心とする研究チームは、彗星が完全に霧散してしまう前に、短期間で3回の観測を行うという極めて濃密な計画を立案しました。この提案は、無事に採択され、その一部は早速実行されています。 このような緊急観測のデータは、立案したチームが占有するのではなく、観測後すぐに全世界の志ある研究者や市民に公開されます。そのため、世界中の誰もが最先端の宇宙の姿に触れることができます。 実際に、2025年12月29日に、近赤外線カメラ、ニアカムと、中間赤外線カメラMIRIで取得された画像が公開されているので触ってみましょう。 まずは、近赤外線カメラ、二アカムで取得されたデータを、三色合成するとこのようになります。
可視光に近い0.7マイクロメートルから、地球の大気の影響で地上からの観測が難しい、3.2マイクロメートルまで、幅広い波長帯の複数のフィルターが使用されています。これらの波長を重ね合わせることで、塵の粒子の大きさやその広がりを詳細に把握できます。画像からは、それぞれの断片が独立して活動し、新鮮な物質を周囲に撒き散らしている様子が鮮明に見て取れます。 次に、中間赤外線カメラ・MIRIのデータを触ってみましょう。
中間赤外線の観測では、波長10マイクロメートルと18マイクロメートルの2枚のフィルターを用いて画像が取得されています。これらの二つの画像を重ね合わせて、適当に色をつけるとこのようになります。この波長帯では、太陽光を浴びて温まった塵が放つ熱的な光を直接捉えることに適しています。そのため、塵の温度分布や、可視光では見えにくい大きな岩石質の破片の存在を明らかにすることができます。 太陽系誕生の謎に迫る「3次元分光」の可能性このような近赤外線で捉えた『太陽光の反射』と、中間赤外線で捉えた『塵自体が放つ熱の放射』の、2つのデータを組み合わせることで、彗星の内部から放出された物質がどのような性質を持っているのか、その全貌を統合的に理解できるようになります。 ただし、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の強みは、こうした画像による形状の観測だけではありません。今回の緊急観測の最大の狙いは、画像の一点一点から詳細な成分データを抽出する分光観測にあります。 この観測プログラムでは、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡に搭載されたNIRSpecの3次元分光機能を用いた観測も予定されています。通常の観測では、天体を写真として撮るか、あるいは特定の点や線の成分を詳しく調べるかのどちらかでした。しかし、この3次元分光機能を使うと、カメラの視野に映るすべての場所のスペクトルを同時に取得することができます。 そのため、彗星のように広がった天体であっても、どこにどのような物質が存在するのか示す化学組成の地図を精密に作成することが可能になります。とくに、今回の彗星のように核が複数の破片に分かれた場合、それぞれの断片ごとに、水の氷と二酸化炭素の比率に違いがあるのか? そして、破片ごとに成分が異なっていれば、それは46億年前にこの彗星が形作られた際、場所によって異なる材料が取り込まれていたという中身のムラ、つまり不均一性を示す重要な証拠となります。とりわけ、現在の彗星は、太陽の熱によって表面が剥がれ、太陽系が誕生した当時のままの成分がむき出しになった状態と考えられます。 この貴重な瞬間をジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡で立体的に分析することにより、彗星という凍りついたタイムカプセルを正しく読み解き、太陽系がどのようにして作られたのかという、大きな謎が解き明かされると期待されています。 今後の進展が楽しみですね! Credit: NASA, ESA, CSA, STScI Bodewits et al. 2025 https://arxiv.org/abs/2511.19707v1 (责任编辑:) |







